五嶋アケミ ☆ 職業:役者

スペイン・バルセロナで役者修行中

そのままで完璧だった

f:id:akemigoto:20170407194420j:plain朝からビリーのヨガ。帰ってから、チェタのパートナーのミオに会いに行く。今日はミオとチェタのうちに泊まる約束をしてある。

チェタが亡くなってまだ5日。バルセロナ郊外の駅に私が着いてから、ミオはずっとしゃべっている。まるで子供がおなかがすいてるんだか、眠いんだか、機嫌が悪いんだか、どこか痛いんだか、わからなくてただひたすら泣いているみたいに、ひたすらしゃべっている。彼女は40歳を過ぎた大人だから、時々は泣くけど、子供みたいにずっと泣いているわけには行かないんだろう。

そして、とてつもない大きな怒りを抱えている。しゃべることのすべてに怒りのフィルターがかかっているのを感じる。やっと出会ったパートナーが出会いから4年経つちょっと前に亡くなってしまった。チェタの病気が見つかる前に、お母さんを癌で看取り、その何年か前には、当時結婚していた30歳年上の夫を癌で看取っている。立て続けに大切な人を病気で亡くしてしまったことに怒りを感じている。何で自分にばかりそんなことが起こるんだろう。やっとチェタに出会えたのに!チェタと一緒に二人でおばあちゃんになりたかったのに!

彼女は音大を出たソプラノ歌手で、とてもきれいな声で歌う。思い出したように歌を歌うが、その歌がチェタのことを思い出させ、また涙する。何を見ても涙が出る。涙をコントロールできなくて、嫌だと言う。深い悲しみととてつもない怒りが交互に現れて、本当に疲れているのがわかる。

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ミオは言う、「チェタには何にも問題がなかった。生まれたときから完璧だった。周りが彼女に問題を植え付けて、苦しませた。美しくなくてはいけない。太っていてはいけない。素敵な男の人と付き合わなくちゃいけない。幸せな結婚をしなくちゃいけない。安定した職に就かなくてはいけない。子供を産まなくちゃいけない。彼女はお姉さんたちの植え付ける価値観どおりに生きられなくて悩んでいた。

でも、チェタは生まれたときから素敵な笑顔をしていた。太っていても、素敵な男の人と付き合っていなくても、結婚していなくても、安定した職についていなくても、子供を産んでいなくても、完璧だった。チェタはチェタのままで、生まれたときから完璧だったのよ。

昼ごはんを食べて、夕方旧市街まで散歩に行く。思い出がいっぱいの家から出て、少しは気がまぎれるかな。でも時々思いつめた顔をして、涙を我慢している。旧市街も一緒に散歩したんだろう。私はただそばにいて、話を聞いて、抱きしめることぐらいしか出来ない。

夜、彼女が友達と電話で話している間に私はソファーで寝てしまった。ベッドに移動してお休みなさいをすることにした。