五嶋アケミ ☆ 職業:役者

スペイン・バルセロナで役者修行中

自分の道

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髪を切る。やっとやっと髪を切る。オーディションや関わっている作品によってなかなか髪が切れないときが続いていたけれど、やっとやっと切れる時が来た。今日は絶対に髪を切る。

でもいつもの美容院は来週まで予約でいっぱい、と言われた。どうしようかな、前に行ってたとこまで、乗り物を乗り継いで行こうかな、でもそんなに遠くまで行きたくないな。でも、絶対今日切りたい。明日オーディションに送られたら、またしばらくアウトだ。

そんなことを考えながら、とりあえずうちを出たら、すぐ角が美容院だった。

ここが行きつけの美容院だったら、どんなに便利だろう。試してみることにした。「今、切っているから、30分後に来て。」と言われ、お買い物をして30分後に行く。

外国人訛りのあるスペイン語。でも、どこの訛りかわからない。結構勢いのあるお姉さんで、入って10分もしないうちにシャンプーを済ませ、カットが始まり、私の身元調査も終わった。(「どこに住んでいるの?どこ出身?バルセロナには何年ぐらい居るの?仕事は?役者!?あなたは有名人?最後に髪を切ったのはいつ?どこの美容院?どうしてこの店に来たの?髪を染めたことがある?パーマは?などなど。)

彼女について私が得た情報は、ウクラニア出身で、バルセロナに来て6年ってこと。手早くカットしていく。切り方に迷いがあんまり見られない。結構親身になってアドバイスしてくれる。手早くやってくれて、まずは、さっぱりした。結構かわいくなったし。いえい!

ダーリンに写真を送る。「女子大生みたいだな!早速ケータイの待ち受けにした!」もう、愛すべき私のダーリン!

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「おじいちゃんの里帰り」をAmazonで見る。スペインでドイツの映画を日本語の字幕で見られるなんて、本当に便利。こっちにも外国の優れた映画が入ってくるけど、字幕がスペイン語だから、私なんて字幕を読んでいるうちに終わってしまう。かといって、吹き替えは見たくない。だから外国の映画は日本に帰って日本語の字幕でよく見ていた。

この映画のテーマは「自分の道」だと思う。まず、ポスターにもあるおじいちゃんが家族を乗せたワゴン車を運転しているイメージは「彼の道」を象徴している。彼の道は「家族」ととても深く結びついている。

「自分の道」を考えるときに、この家族にとっては「国籍」というコンセプトがとても重要だ。国籍とはパスポートの違いじゃない。自分はどんなところで生まれ、どのような経過で今に至ったのか、どのような文化、知恵や哲学を先祖から受け継いだのか。そういった「起源」みたいなものはパスポートが変わったところで、変わらない。「起源」を知ることは自分を知ることにつながる。

そしてその自分がこれからどこに向かっていくのか、自分の前に伸びている「道」という人生を考えること。その道は自分ひとりで進むのではない。「未来の自分に出会うために、過去の自分と一緒に今の自分が人生を歩いている」ということに、この映画は気がつかせてくれる。過去の自分と現在の自分が一緒に団欒している最後のシーンが象徴している。

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もうひとつは、その「自分=個人」という視点。トルコ人、移民、ドイツ人などということでひとくくりにするのではなく、人間には一人ひとりの個性や人格があるということ。家族が「おじいちゃん」を語るとき、トルコ人移民ということで語っているのではなく、自分にとってのその「人」を語っている。100万人目の移民と100万1人目の移民は別人である。おじいちゃんの奥さんが彼を「フセイン!」と名前で必ず呼んでいる。同じきょうだいでも、人それぞれ性格や考え方が違う。同じ移民の子供でも、トルコ語を話す子と話さない子がいる、などなど。それらをひとくくりにして捕らえてはいけないと思う。

今取り組んでいる舞台に何か示唆があるかなと思ってこの映画を見た。舞台にとっても、私個人にとっても「自分の道」という視点は非常に大切だと思う。過去の自分があるから、今の自分があり、未来の自分がある。